【2022年】読書記録を振り返る日記

2022年も残り1日。年内の読了本はここまでかなということで振り返り。読んだ本はキリがよく下記70冊。()内は読了日。 ※12/31に1冊追記。計71冊。

 

1.世界と僕のあいだに/タナハシ・コーツ(2022/01/01)
2.不実な美女か 貞淑な醜女(ブス)か/米原万里(2022/01/05)
3.須賀敦子全集 1巻/須賀敦子(2022/01/08)
4.戦争と法/長谷部恭男(2022/01/13)
5.北回帰線/ヘンリ・ミラー 大久保康雄訳(2022/01/18)
6.供述によるとペレイラは……/アントニオ・タブッキ 須賀敦子訳(2022/01/25)
7.打ちのめされるようなすごい本/米原万里(2022/01/27)
8.死海のほとり/遠藤周作(2022/01/31)
9.ちくま日本文学 谷崎潤一郎谷崎潤一郎(2022/02/06)
10.マサリクとチェコの精神 アイデンティティと自律性を求めて/石川達夫(2022/02/16)
11.須賀敦子全集 2巻/須賀敦子(2022/02/18)
12.物語 哲学の歴史/伊藤邦武(2022/02/28)
13.世界史(下)/ウィリアム・H・マクニール(2022/03/01)
14.みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記/星野博美(2022/03/07)
15.人間の大地/サン=テグジュペリ 渋谷豊訳(2022/03/12)
16.須賀敦子全集 3巻/須賀敦子(2022/03/17)
17.心はどこへ消えた?/東畑開人(2022/03/17)
18.ちくま日本文学 川端康成川端康成(2022/03/20)
19.ここに物語が/梨木香歩(2022/03/22)
20.居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書/東畑開人(2022/03/25)
21.民主主義とは何か/宇野重規(2022/03/30)
22.孤独な散歩者の夢想/ジャン=ジャック・ルソー 永田千奈訳(2022/04/03)
23.コンビニ人間村田沙耶香(2022/04/05)
24.神谷美恵子コレクション 本、そして人/神谷美恵子(2022/04/07)
25.憲法とは何か/長谷部恭男(2022/04/07)
26.影に対して/遠藤周作(2022/04/10)
27.マサリクとの対話 哲人大統領の生涯と思想/カレル・チャペック 石川達夫訳(2022/04/18)
28.ある家族の会話/ナタリア・ギンズブルグ 須賀敦子訳(2022/04/20)
29.史上最大の革命/ローベルト・ゲルヴァルト(2022/05/02)
30.眠りの航路/呉明益(2022/05/04)
31.日本人は何を考えてきたのか 明治編/NHK取材班編著(2022/05/06)
32.須賀敦子全集 4巻/須賀敦子(2022/05/23)
33.ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2/ブレイディみかこ(2022/05/24)
34.喜べ、幸いなる魂よ/佐藤亜紀(2022/05/30)
35.日本人は人を殺しに行くのか/伊勢﨑賢治(2022/06/05)
36.三十の反撃/ソン・ウォンピョン(2022/06/05)
37.アンゲラ・メルケル/マリオン・ヴァン・ランテルゲム(2022/06/13)
38.なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない/東畑開人(2022/06/15)
39.スイート・ホーム/原田マハ(2022/06/19)
40.三酔人経綸問答/中江兆民 桑原武夫・島田虔次訳 岩波文庫(2022/06/20)
41.古本食堂/原田ひ香(2022/06/24)
42.深い河/遠藤周作(2022/07/02)
43.大人は泣かないと思っていた/寺地はるな(2022/07/11)
44.自転車泥棒/呉明益 天野健太郎訳(2022/07/19)
45.それで君の声はどこにあるんだ?黒人神学から学んだこと/榎本空(2022/07/22)
46.神谷美恵子著作集3 こころの旅/神谷美恵子(2022/07/26)
47.私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか:カーニズムとは何か/メラニー・ジョイ(2022/07/30)
48.ドキュメント<アメリカ世>の沖縄/宮城修(2022/08/05)
49.すみれ荘ファミリア/凪良ゆう(2022/08/06)
50.小田嶋隆のコラムの切り口/小田嶋隆(2022/08/10)
51.まだ温かい鍋を抱いておやすみ/彩瀬まる(2022/08/13)
52.金閣寺三島由紀夫(2022/08/15)
53.富士日記(上)/武田百合子(2022/08/20)
54.100分de名著「金閣寺」/平野啓一郎(2022/08/21)
55.戦争と平和(一)/トルストイ 工藤精一郎訳(2022/08/28)
56.愚か者同盟/ジョン・ケネディ・トゥール 木原善彦訳(2022/09/04)
57.戦争と平和(二)/トルストイ 工藤精一郎訳(2022/09/26)
58.北京の胡同/ピーター・ヘスラー 栗原泉訳(2022/10/04)
59.戦争と平和(三)/トルストイ 工藤精一郎訳(2022/10/22)
60.未来をつくる図書館ーニューヨークからの報告ー/菅谷明子(2022/10/23)
61.語学の天才まで1億光年/高野秀行(2022/10/30)
62.ようこそ中華世界へ(シリーズ地域研究のすすめ)/川島真編(2022/11/07)
63.忖度しません/斎藤美奈子(2022/11/12)
64.歴史の本棚/加藤陽子(2022/11/18)
65.ある大学教員の日常と非日常/横道誠(2022/11/25)
66.自由対談/中村文則(2022/11/29)
67.戦争と平和(四)/トルストイ 工藤精一郎訳(2022/12/18)
68.テヘランでロリータを読む/アーザル・ナフィーシー 市川恵里訳(2022/12/25)
69.天文学者は星を観ない/シム・チェギョン オ・ヨンア訳(2022/12/29)
70.世界が終わる夢を見る/亀山郁夫(2022/12/30)
71.君が戦争を欲しないならば/高畑勲(2022/12/31)

一覧にしてバーっと振り返ってみた印象としては、「こんなもんかぁ」というのが正直なところ。冊数を多くすることだけにこだわっているわけではないし、多ければいいというものでもないとは思っているのだけれど「もっと読みたかったなぁ」という気持ちはとにかくある。ただ、その気持ちはこの先ずっとあるのだろうなとも思う。読みたい本は日々どんどん増えていくのに、それに読むことが追いつくことは、おそらくこの先ずっと無い。だからこそ、私は一生読むことをやめられないだろうと思う。

以下、特に印象に残っている本をピックアップ。

不実な美女か 貞淑な醜女(ブス)か/米原万里

数年前から薄々気づきはじめていたのだけれど、私はどうやら頭のいい女性が大好きらしい。米原万里はそのひとりで、自身の頭の良さを全く見せびらかすことなく、ユーモア溢れる(といえば聞こえがいいがほとんど下ネタな)文章で読者を手放しに笑わせる。だけどやはり隠しきれない知性がそこかしこに見え隠れしていて、それがもうとにかくかっこいい。特にエリツィンに「マリ!マリ!」と気に入られまくったというエピソードが大好き。「もしも」を持ち出すのは机上論でしか無いけれど、もしもいま米原万里が生きていたら、この世界に何と言うのだろうと考えずにはいられない。

須賀敦子全集/須賀敦子

2021年後半に初めて須賀敦子を読んでからどハマりしてしまい、今年は全集を読破して訳本も何冊か読んだ。須賀敦子米原万里同様、文章から知性が溢れ出てしまっている女性。タイプは全く違うけれど。

ぐずぐずいってないではやく嫁に行け、それがいやなら修道院にはいればいい、と先輩に言われても、そんなんじゃないという気がした。自分で道をつくっていくのでなかったら、なんにもならない。そのころ読んだ、サン=テグジュペリの文章が私を揺りうごかした。「自分がカテドラルを建てる人間にならなければ、意味がない。できあがったカテドラルのなかに、ぬくぬくと自分の席を得ようとする人間になってはだめだ」ヴェネツィアの宿/「大聖堂まで」より)

おそらく私が須賀敦子を好きなのはこういう部分なのかなと思う。とにかく文学が好きで好きで自分にはこれしかないと思い続けているけれど、じゃあどうしたらいいのかはわからずにもがきながら、遠いイタリアの地で生き続けたところ。現地で結婚したイタリア人の旦那さんは早逝、須賀敦子自身も晩年は病と闘いながら69歳でこの世を去る。須賀敦子の人生そのものが「文学」のような女性だなと思う。

●眠りの航路/呉明益

自転車泥棒/呉明益

呉明益は今年初めて読んだ作家の中でも特に印象深い。まだこの2冊しか呉明益の本は読んだことがないのだけれど、この2冊に関してはどちらも著者の父の記憶(特に日本植民地時代や戦時中のもの)を主な題材にしていて、そこから浮かび上がってくる「日本人にとっての戦争」とは全く異なる物語によって自分の狭すぎる世界を強く揺さぶられる感覚がショックでもあり、だけど一つの「物語」として本当に美しくもある。これからもっと他の作品も読んでみたいと思う。

戦争と平和トルストイ

これはとにかく長かった…。でも今年後半はこの作品が自分の読書生活の中でささやかな軸として存在していたような気がして、愛着というか何と言うか。いちばん好きな登場人物はなんだかんだでナターシャ。

テヘランでロリータを読む/アーザル・ナフィーシー

「りんごの食べ方が艶めかしかったから」と言う理由で捕まるほどに抑圧された体制下に置かれる女性たちにとって、文学を読むことに意味はあるのか、文学は彼女たちを救えるのか。彼女たちと置かれている状況は全く異なるけれど、それでも同じく文学を大切な灯りのように抱きしめて生きてきた身としては、どうか彼女たちにとって灯りとなる文学がせめていつまでもそばにあってほしいと願う。そして「救い」なんて求めなくても良いくらい、純粋に彼女たちがエンターテイメントとして文学を楽しめるような世界になってほしいと思う。

 

こうして振り返ってみると、今年はここ何年かのなかでも「文学」に寄っていた読書だったかなと思う。自身の毎年の読了本リストを見返してみると、2018年くらいから経済・宗教・政治・歴史関連の本が増え始めて逆に小説などは減っていたのだけれど、去年の後半くらいからまた少しずつ小説などフィクションを読むようになって、その流れで今年もここ数年の中では小説を多く読んだ1年だったかなと思う。そしてやっぱり自分は文学が好きだなぁと思ったし、それを深く味わえるような知識をもっと身につけて、もっとたくさんの作品に圧倒されたいし揺さぶられたい。と考えると、来年もどんな本に出会えるかとても楽しみ。あと、もう少しいい文章も書けるようになりたい…。

「好奇心はもっとも健全なかたちでの不服従である」(ナボコフ

「あなたの行動がほとんど無意味であったとしても、それでもあなたはしなくてはならない。それは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」(ガンジー

今年出会った全ての本と、この世にすばらしい本を送り出すために日々尽力してくださっている全ての方々に感謝と敬意を表して。そして、この世に生きる全ての人が、ひたすらに本に没頭できるような世界になることを願って。