2024年1月2日(火)

新年。年末年始は東京の家でMとふたり、なんら変わりのない日々を過ごす。家で仕事をする私たちは31日の夜まで仕事をし、1日の午前から仕事をする。年が変わろうと変わらなかろうと、明日も今日と変わらない朝がきて、なんら変わりない日々が続いていくだろうという安心感をもって過ごせる日常が、何よりもありがたい。不安な夜、寂しい夜を過ごす人たちが1日も早く、1人でも少なくなることを心から願う年始。

そんな気持ちで年末感の実感が得られぬまま過ごしていたら、年内にやるつもりだった読了本まとめが年をまたいでからになってしまった。

【2023年に読んだ本】

1.この星で生きる理由/佐治晴夫(2023/01/04)
2.バニヤンの木陰で/ヴァディ・ラトナー 市川恵里訳(2023/01/10)
3.海と毒薬/遠藤周作(2023/01/18)
4.アラブ、祈りとしての文学/岡真理(2023/01/21)
5.夕暮れに夜明けの歌を/奈倉有里(2023/01/27)
6.酔どれ列車、モスクワ発ぺトゥシキ行/ヴェネディクト・エロフェーエフ 安岡治子訳(2023/01/30)
7.香港少年燃ゆ/西谷格(2023/02/01)
8.炉辺の風おと/梨木香歩(2023/02/04)
9.文藝別冊 米原万里(2023/02/11)
10.ロシアのなかのソ連/馬場朝子(2023/02/13)
11.文化と抵抗/エドワード・W・サイード(2023/02/25)
12.グレイスレス/鈴木涼美(2023/02/26)
13.転がる香港に苔は生えない/星野博美(2023/03/05)
14.魔女の1ダース/米原万里(2023/03/08)
15.ロシアは今日も荒れ模様/米原万里(2023/03/19)
16.千年の歓喜と悲哀 アイ・ウェイウェイ自伝/艾未未 佐々木紀子訳(2023/03/22)
17.謝々!チャイニーズ/星野博美(2023/04/03)
18.祖国地球/エドガール・モラン(2023/04/06)
19.パレードのシステム/高山羽根子(2023/04/08)
20.「徴用工」とは何か/波多野澄雄(2023/04/16)
21.祖母姫、ロンドンへ行く!/椹野道流(2023/04/21)
22.水よ踊れ/岩井圭也(2023/04/22)
23.根をもつこと(上)/シモーヌ・ヴェイユ(2023/05/09)
24.顔のない遭難者たち 地中海に沈む移民・難民の「尊厳」/クリスティーナ・カッターネオ 栗原俊秀訳(2023/05/12)
25.エルミタージュの緞帳/小林和男(2023/05/19)
26.台湾漫遊鉄道のふたり/楊双子(2023/05/21)
27.惑う星/リチャード・パワーズ 木原善彦訳(2023/05/26)
28.中国のリアル/兪敏浩等(2023/06/02)
29.上海灯蛾/上田早夕里(2023/06/08)
30.無限角形 1001の砂漠の断章/コラム・マッキャン(2023/06/19)
31.コソボ 苦闘する親米国家/木村元彦(2023/06/23)
32.チョンキンマンション 世界の真ん中にあるゲットーの人類学/ゴードン・マシューズ(2023/07/02)
33.源氏物語1/アーサー・ウェイリー(2023/07/04)
34.父ではありませんが 第三者として考える/武田砂鉄(2023/07/05)
35.ヴィオラ母さん/ヤマザキマリ(2023/07/09)
36.白鶴亮翅/多和田葉子(2023/07/15)
37.死体解剖有資格者/スー・ブラック(2023/07/17)
38.ヘーゼルの密書/上田早夕里(2023/07/24)
39.東大生、教育格差を学ぶ/松岡亮二(2023/07/28)
40.人間の土地へ/小松由佳(2023/08/02)
41.堀田善衛を読む/宮崎駿ら(2023/08/05)
42.五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後/三浦英之(2023/08/22)
43.亡霊の地/陳思宏(2023/08/30)
45.活字三昧/目黒孝二(2023/09/28)
46.証言天安門事件を目撃した日本人たち/六四回顧録編集委員会(2023/10/14)
47.香港 あなたはどこへ向かうのか/阿古智子(2023/10/15)
48.同調圧力:デモクラシーの社会心理学/キャス・サンスティーン(2023/11/01)
49.文にあたる/牟田都子(2023/11/08)
50.不便なコンビニ/キム・ホヨン(2023/11/25)
51.直訳やめたら英語が一気にできるようになった私の話/岩田リョウコ(2023/12/05)
52.街道をゆく10 台湾紀行/司馬遼太郎(2023/12/11)
53.武漢日記 封鎖下60日間の魂の記録/方方 飯塚容・渡辺新一訳(2023/12/25)
 
2022年は合計71冊だったので前年比より冊数自体は減。それでも大学の勉強が忙しかったわりには結構がんばって読んだんだなぁという印象。
 
【印象に残っている本】
・アラブ、祈りとしての文学/岡真理

小説それ自体は現実を変えはしない。しかし、小説を読むことは私たちのなかの何かを、確かに根源的に変える。コンスタンティーヌにせよガザにせよ、行ったこともないそれらの土地が、小説を読むことで変貌を遂げる。私のなかで大切な、かけがえのない存在になる。変貌するのは土地だけではない。土地とともに、その地に住む人々、会ったこともなければ言葉を交わしたこともないそれらの人々が、あたかも旧知の間柄のように、私たちの親しい友人になる。小説を読んだ私たちは想像することができる、彼、そして彼女が私たちの友人であり兄弟であり姉妹として傍らにあるような未来を。小説を読むことで世界と私の関係性が変わるのだ。

私が本を読んだり勉強をしたりする動機は、ここに記されていることと同じであると思った。だからこそ、今も失われ続けている命を思うと、本当に心が痛む。

 

ロシアのなかのソ連/馬場朝子

「兵士たちはなんのために若い命を落とさなくてはならなかったのか」と、いつも同じ問いが頭をよぎった。
 国家にとって最も大切なものは領土なのか、国民の命なのか。祖国のために命を捧げるという美しき世迷い言に惹かれる人がいる限り、世界で戦争はなくならないのだろう。

本当に。本当にその通りだと思った。そしてそれを煽っている外野は誰なのか。自分もその中の1人になっていないか。自問し続ける。

 

・ 転がる香港に苔は生えない/星野博美

自分の中にある香港への思いをより大きくさせた1冊。情報量もスピード感も圧倒的な街からは意外に思えるような、たまらない人間臭さが好きだ。

 

顔のない遭難者たち 地中海に沈む移民・難民の「尊厳」/クリスティーナ・カッターネオ

移民・難民の尊厳を取り戻そうと尽力し続けるイタリアの人々。対して己の国は、と省みてみると情けなさしかない。

 

無限角形 1001の砂漠の断章/コラム・マッキャン

これを読んだからこそ、ガザで繰り広げられる惨状が「遠い国の出来事」とは思えなくなっている。先に引用した岡真里さんの言葉を痛感する。

 

2024年も貪欲に本を読み続けていきたい。そして1冊でも心に残る本に出会えたら、それが生きる喜びになる。自分が信じることをただ直向きに続けていく。今年もそんな1年でいられますように。