2022年10月25日(火)

朝6時半過ぎ起床。夢の中で中国大使と今週末に会う約束をしたが、今週末はワクチンを打ちに行く予定があったのを起きてから思い出した。ちなみに昨日の夢ではプーチン大統領と一緒にグリーンカレーを食べていた。今朝も寒い。朝食は味噌汁、浅漬け、豆腐枝豆ハンバーグ、梅干し、納豆ごはん、柿。午前中は勉強、読書。お昼はレトルトのハヤシライス。午後は少し晴れてくるとの予報だったので、晴れてきたら散歩がてらスーパーまで行こうと思い、晴れてくるまでソファーで本でも読んでようと思っていたら結局全然晴れてこなかったので、結果として午後中ずっとソファーで本を読んでしまった。冷凍の今川焼をおやつに食べる。

高野さんの「語学の天才まで1億光年」を時々吹き出しそうになりながら読んでいる。特にアフリカ篇がおもしろかった。高野さんがコンゴを訪れたときのこと。コンゴは旧フランス領だったので今でもフランス語が公用語であり、当然フランス語を話せば現地の人との会話は成立するのだが、「リンガラ語」という現地で生まれた共通語もあり、このリンガラ語を話すとフランス語とは全く反応が違い、「ウケがいい」らしい。というのも外国人(特に西洋人)は当然のようにフランス語しか話さないため、同様に「外国人」である高野さんがリンガラ語を話すと(フランス語より断然カタコトであったとしても)「この白人(現地では東洋人も白人と同じ括りらしい)はリンガラ語を話すぞ!」といって大ウケなのだそうである。

私は地味で目立たない人生を送ってきた。学校の成績もスポーツもそこそこであり、女の子とはまるで縁がなかった。バブル時代だったのに、冗談ではなくディスコやテニスサークルがアフリカより遠く思えたほどだ。それが今、突然人気の絶頂を迎えてしまったのだ。

そして個人的に「はっ」とした部分がここ。

フランス語はコミュニケーションに必須だが、意思や情報を伝達するだけだ。いっぽう、リンガラ語での会話はコミュニケーションを十全にとるには程遠いが、地元の人たちと「親しくなれる」のである。

これを読んでいてすぐにMの行動を思い出した。

Mは英語はほとんど話せないし(中高の学校の授業で習ったのみのレベル)その他の言語も全く話せないのだけど、とにかく海外旅行に行くとカタコトでもいいから現地の言葉で話すのである。お店を出るときは「ありがとう」とか「美味しかった」とか言うし、ホテルのチェックアウトのときは「さようなら」と言う。そしてそれを言うと「会話」とまではいかなくても、現地の人とのちょっとしたコミュニケーションが生まれる。マレーシアではマレー語で「トゥリマカシ(ありがとう)」と言ったら、お店のおばさんが「サマサマ〜」と返してくる。そこでMは「どういたしまして=サマサマ」なのだと学ぶ。香港ではMがお店のおじさんに「多謝(ドージェ:ありがとう)」と言ったら、おじさんはジェスチャーで「『多謝』じゃない、『謝々(シェイシェイ)』だ」と教えてくれる。と言うのも「多謝」と「謝々」は日本語訳にするとどちらも「ありがとう」なのだけど、「多謝」はお店の人がお客さんに対して言うような丁寧な「ありがとう」で、お客さんはお店の人には「謝々」を使うのが一般的なのだそう。「Thank you」でも通じたであろうところを、現地の言葉を使うことでおじさんとのコミュニケーションが生まれ、同時にそこから「生きた言葉」を学ぶのである。

国内でもこんなことがあった。以前友人らとウイグル料理のお店に行ったとき、店員さん(ウイグル人)の方が帰り際にお店の外まで見送ってくれたのだけど、私たちはすでに歩き出している時にMはその店員さんに何か一言つぶやいたのである。するとそれまでは形通りの営業スマイルといった感じだった店員さんが、すごく嬉しそうにニコーっと笑ったのである。それを道の先で見ていた私はあとでMに「あの時なんて言ったの?」ときいたら、事前に調べていたウイグルの言葉で「ありがとう、美味しかった」と伝えたそうなのである。

Mはこんなふうに、言語のルーツが異なる人と話すとき、カタコトであっても少しでも相手の言語で話そうとする。そしてそんなMが、何を隠そう一番最初に私に高野さんの本を勧めてくれた人物なのだ。そう、Mは私なんかよりずっと筋金入りの高野さんファン。だからこそ、高野さんの本をずっと読んでいるうちに本人は意識しているのかしていないのかわからないが、知らず知らずこの高野さんの「言語」に対するスタイルをMも身に付けたのかもしれない、と今回の高野さんの本を読んでいて個人的にすごく納得したのである。

「海外旅行に行った時に、もっとちゃんとこっちの伝えたいことを伝えられたら旅行の幅も広がるだろうなぁ」と思って私は英語を勉強しているのだけど、高野さんの本を読んで、そしてMの行動を今一度思い出してみると、「こっちの伝えたいことを伝える」だけがコミュニケーションなのかと問われると、それは違うのかもしれないなと気付かされる。相手の言語で、「親しくなれる」言葉を、これからはもっと使ってみるようにしたい。早くまた海外旅行に行きたい(そんなM曰く「でも英語はぜったい話せた方がいい。代理店を通さず自分でホテルもツアーも手配した方が絶対安く済むから」「自分はもう英語習得は諦めたから…頼りにしてるね」とのことである)。